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ラディカル・デモクラシーと分散型技術

1、「ラディカル」と言えば、「過激な」とか「急進的な」という意味を思い浮かべがちであるが、ここでは「根源的な」とか「根本的な」という意味で使うことをお断りしておく。したがって、ラディカル・デモクラシーとは、根源的なデモクラシー、つまり、草の根民主主義や参加型民主主義のことを意味している。では、どのように分散型技術と結びつくのかかが今回の話題である。

 

2、2017(平成29)年12月から2020(令和2)年3月にかけて、日本経済新聞紙上で度々注目されている人物がいる。台湾で分散型技術を使い行政に「市民の声」を取り込む試みを進めている唐鳳(オードリー・タン)氏である。30代半ばでデジタル担当相に就任した異才で、若者らが立法院(国会)を占拠した2014年の「ひまわり学生運動」では、民間ハッカーとして活躍していたとのことである。唐氏は、2016年10月に政権に参加すると、分散型技術のオンライン・プラットホームを通じて、新たな請願システムや、政府が提案する規制やインフラ建設計画などへの意見を取り入れている。唐氏は、ネットを利用した民意くみ取りの意義について「政治家や業界団体への発言力を持たない若い世代でも、政治に参加することはできる」と説明し、行政の情報公開の拡大についても「政府自体がデジタル化すれば、もっと安く簡単に情報公開できる」としている(日本経済新聞2017(29).12.27 台湾、広がる草の根民主主義)。

 

3、もう一つ、分散型技術が参加型民主主義に利用されているのが、重み付け投票である。これは、一つの議題に対して賛成か反対かの二者択一ではなく、一つの議題に含まれている複数の争点について、デジタル・プラットホームを通じて自分がどこをどのように重視しているかを表明できる手法であり、予算の割り当てや人員の配置割合などに適している。米コロラド州議会の下院歳出委員会では、4000万ドル(約44億円)の予算に対して提案された100以上の使い道の案のどれにどのように予算を割り当てるかを決めていく際に、重み付け投票を使い迅速に答えを導き出した例もあるようである(日本経済新聞2020(令和2).221 英フィナンシャル・タイムズのコラム 民主主義を鍛える「分散化」グローバル・ビジネス・コメンテーター ラナ・フォルーハー)。

 

4、分散型技術をうまく利用することによって、参加型民主主義を実現することは可能なようであるが、個の力がより強まる分散型ネットにおける倫理やルールをしっかりしておかなければ、今度は個人が価値観でつながり新たな対立を生むことにもなるので、政治が世界全体の設計に携わり、広範な知見がインストールされるように働きかけなければならない(日本経済新聞2020(令和2).3.22 風見鶏 ディストピアからの脱出)。

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