人間の一生は、誕生から死亡まで、家族・学校・家庭・会社・地域社会・国家・外国と関わりを持ち、それぞれの段階で様々な法律関係を結び、その維持・継続や解消を繰り返しますが、必ずなんらかの相談者を必要とします。

中村法律事務所

nakamura law office

お気軽にお問い合わせください

082-221-0678

お問い合わせフォーム

[受付]平日 8:30〜17:00 ( 夜間、土日祝日のご相談は事前にご連絡ください 。メールでのご相談は無料。)

HOME > インフォメーション

政治とカネ~「政務活動費」について

 

第1、はじめに

    政治とカネについては、元衆議院議員河井克行氏による大規模買収事件が想起され、政治資金規

   正法と公職選挙法の問題として取り上げられるが、より身近な地方議会議員についても、2014(平

   成26)年7月の野々村竜太郎兵庫県議会議員や2020(令和2)年2月の熊本憲三広島市議会議員によ

   る「政務活動費」の不正支出が問題となっており、来年は統一地方選挙が施行されることもあるの

   で、この「政務活動費」の問題から取り上げることとする。

 

第2、「政務活動費」の成り立ちと現状

 1,「政務調査費」として導入

   ・きっかけは、国会議員の「立法事務費」を規定した法律が1953(昭和28)年に施行されたこと

   から、「国会議員に出るなら地方議員もほしい」ということになり、地方自治法には国会の立法事

   務費の交付に当たるような条文も条例への委任もなかったが、同法232条の2の「公益上の必要があ

   る場合」の補助として公費を支給してもらうことになり、この補助金支給が「調査研究費」として

   都道府県から政令指定都市、一般市へと広がっていった。

 

   ・しかし、「公益上の必要がある場合」の補助を出すかどうかの権限は首長にあり、首長がその使

   途に厳格な基準を設け、領収書の添付や報告書を求めることを徹底すると、執行機関の監視機能を

   果たす議会活動への干渉と言われるおそれがあったので、公費支出でありながらノーチェック同然

   になり、市民オンブズマンから廃止の要求や訴訟が起こされることになった。

 

   ・地方議会としては世間的にも堂々と使えるようにしてほしいと国に要請した結果、議員立法によ

   り、2000(平成12)年に地方自治法100条の中に14項が新設され、「地方公共団体は、条例の定

   めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会に

   おける会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる」として、条例に基づいて政務調

   査費を支給できる措置が取られることになった。

 

 2,「政務調査費」から「政務活動費」へ改称

   ・しかし、「政務調査費」の使途に関して住民から批判が絶えない一方で、議員の間には「調査」

   に関わらせることが使途を窮屈にしていると不満が少なくなかったことから、2012(平成24)年

   の改正によって、「政務調査費」を「政務活動費」に改称し、100条14項に「議員の調査研究その

   他の活動に資するため」と「その他の活動」という6文字が付加された。

 

   ・では、地方議員の行う政務活動とは何なのかということになるが、国の場合の意味からすると、

   「政務」は政策の立案・企画にかかわる調査研究ということになるが、地方自治法で政務活動費の

   規定が議会の調査にかかわらせているということは、政策形成機能というより、首長等の事務執行

   をめぐる不透明、不適切なこと、住民との関係で問題が発生していることなどの調査機能であるこ

   とを窺がわせるが、住民との意見交換会など民意の把握・吸収のための活動に要する経費のすべて

   に充てられるわけではない。

 

 3,「政務活動費」の使途の問題

   ・政務活動費の使途は、各議会の手引きで細かく定められており、各種研修の参加費、調査研究

   費、広聴広報費、書籍などの資料費などの資料費に使用可能であるが、政党活動、選挙活動、後援

   会活動、慶弔餞別、飲食を主目的とする会合などには使えず、議員は1年分の収支報告書を提出

   し、議会事務局がチェック、修正した後、閲覧可能な状態で公開される。

 

   ・政務活動は議員活動の一部であることは確かなので、そのための公費支出が議員活動そのものに

   規制を加えることになっているとすると問題があるが、政務活動費を議員活動そのものを規制しな

   いで使えるようにしようとすれば、議員活動なら何でも使える公金支出となってこれも問題であ

   る。

 

   ・政務活動費の使途について、私用のガソリン代、家族を伴った出張旅行、水増し請求、すり替え

   請求、架空請求、着服、会派議員団の宿泊研修など不正の手口による不祥事が絶えないことは、制

   度自体に欠陥があるともいえることになる。

 

 4,「政務活動費」の厳正適用論ないし廃止論

   ・兵庫県議会は、野々村県議の不正支出の問題をうけて、議長の責務と調査、是正勧告等の権限を

   相当拡張するとともに、議会事務局にも政務活動費の収支報告書のチェックなどを行う専門部署を

   新設して厳正適用している。

 

   ・大阪府泉南市議会では、政務活動費と称して費用を支弁されることが議員活動そのものに規制を

   加えることになり、議員の自主的活動の中で自律的な政策提言を行うことのほうが、より柔軟な政

   治活動を行えるのではないかなどの理由で政策活動費を廃止している。

 

第3,「政務活動費」の今後

   ・政策活動費は既得権益視されているため、これを議員報酬に組み込むことは議員の納得が得られ

   ないし、議員報酬の引き上げになることから住民の理解も得られにくい。

 

   ・議員報酬も各自治体によって相当多寡があることから、一律の議論はできず各自治体議会の自覚

   と自律に委ねざるを得ない。

政治とカネ~政治活動および選挙運動の資金と規制

 

<サマリー>

   規正法は、「腐敗行為防止法案」あるいは「政治腐敗防止法案」の名称で検討さ

  れていたものを改めたものであるが、現在までの改正にかかわらず、会社や労働組

      合から政党への献金や政党助成金の中から、「政策活動費」ないし「組織活動費」

     の名目で政党の有力政治家を経由して党の政治家に事実上報告義務なく配布され

     る仕組みが存続している以上、いくら政治家個人への献金を禁止しても、政治とカ

     ネにまつわる腐敗ないし不祥事はなくならず、これを防止するためには、政治に必

     要となるカネの流れをできるだけ透明化していくしかない。

      (政治資金規正法は規正法、公職選挙法は公選法と略称)

 

                     目  次

  第1、はじめに                     

  第2、政治資金とその規制

   1、規正法(「規制」ではなく「規正」)の成り立ち   

   2、規正法の目的および内容              

   3、政治資金の寄附の制限と許容            

   4、識者等による問題点の指摘             

  第3、選挙運動の資金と規制(選挙とカネ)

   1、選挙資金の収集                  

   2、公職の候補者等による公選法上の寄附の禁止     

   3、選挙費用の上限設定(法定選挙費用)と公費負担   

   4、公選法違反としての「買収」と「被買収」      

   5、識者、政治家による問題点の指摘          

  第4、小括                         

     (付記)

 

 

第1、はじめに

    わが国の政治形態は、選挙を通じて選ばれた代表によって構成される国会が国政を運営していく

   議会制民主政治ですが、現実の政治の場の活動が公明かつ公正に行われるかどうかについては、政

   治活動のための資金(政治資金)の問題があります。政治資金の授受などをめぐって、癒着や政治

   腐敗の問題が生じる危険性もあるため、政治資金の流れ等を公開し、その適否の判断を国民に委ね

   るだけでなく直接規制し、そうした危険性をあらかじめ除去することも必要となります。そのた

   め、政治資金の規制については、現実の政党その他の政治団体や政治家の政治活動の実態、選挙制

   度の仕組み、更には国民の政治意識などを総合的に勘案した上で、政治資金の規制によって生じる

   自由権の制約と規制によって実現しようとする公益との合理的な比較衡量が必要となります。

 

第2,政治資金とその規制

 1、規正法(「規制」ではなく「規正」)の成り立ち(1)日本の民主化は連合国軍総司令部(GHQ)

  によって進められ、明治憲法とともに制定された衆議院議員選挙法を改正して昭和21年4月に完全な

  普通選挙のかたちで行われ、現行日本国憲法によって設けられた参議院の議員選挙は、参議院議員選

  挙法を制定して、日本国憲法施行前の昭和22年 4月に、住民による直接選挙である地方選挙とともに

  行われた。

 

 (2)しかし、戦後の混乱した政治事情の中で、政治的腐敗行為が続出したことを受け、群小政党の整理

  と腐敗行為の防止が政治的課題となり、連合国軍総司令部(GHQ)がアメリカの腐敗行為防止法を範

  とする案を示したことから政府が政党法として立案作業に取りかかったが成案に至らず、議員立法に

  よって規正法が昭和23年に制定された。その後、規正法の中の選挙運動費用と寄附の制限に関する規

  定が、昭和25年に制定された公選法に移し替えられたものである。この意味において、公選法は「選

  挙」に関する政治資金を規制するものとして規正法の特別法だと言える。規正法は、昭和41年のいわ

  ゆる黒い霧事件、昭和49年7月の金権選挙と呼ばれた第10回参議院通常選挙で政治と「カネ」が問題

  となり、その改正が取りざたされたが、支配政党の直接的な利害と体質にかかわる分野であることか

  ら、改正案の審議未了廃案をくり返し、昭和50年になって全面改正され、昭和51年からのロッキード

  事件をうけて昭和55年にさらに一部改正された。しかし、選挙制度、政治資金制度等の抜本的な改正

  は、昭和63年に発覚したリクルート事件をきっかけとした平成6 年になってからである。

 

 (3)平成6年にいわゆる政治改革関連法として公選法、規正法の改正、政党助成法、衆議院議員選挙区

   画定審議会設置法の制定が行われ、会社等が行う寄附は、政党・政治資金団体と資金管理団体に対す

   るものに限定し、公職の候補者の政治活動に関する寄附で金銭等によるものについては原則として禁

   止された。そして、平成12年には、会社等が行う寄附については、資金管理団体に対するものも禁止

   され、政党・政治資金団体に対するもののみ認められることになったが、公選法上の選挙運動の取締

   規定の運用とは対照的に、規正法は骨抜き的な傾向をもつことになった。

 

 2、規正法の目的および内容

  (1)規正法は、規則で制限する「規制」ではなく、自助努力を促す意味の「規正」という言葉が使わ

   れている。しかしながら、政治にからむ資金の実態は、刑法の収賄罪まがいの「賄賂」に近い資金

   の流れも往々にして見受けられる。この意味で規正法違反は、国民の目を欺いて議会制民主政治の

   健全な発展を阻害する重大な犯罪となるものである(産経新聞司法クラブ「検察vs小沢一郎『政治

   とカネ』の30年戦争」 158、159頁 新潮社 2009年6月)。

 

  (2)規正法には、次のとおり、①寄附者と寄附の対象者、②量的な面、③寄附者側に着目した質的な

   面、④その他政治資金の公正な流れを担保するための制限があり、政党その他の政治団体は毎年1

   回、年間の政治資金の収支等を公開しなければならない。

   ・①については、公職の候補者の政治活動に関する寄附で金銭等によるものについては原則として

    禁止され、会社等が行う寄附については資金管理団体に対するものは禁止され、政党・政治資金

    団体に対するもののみが認められています。

 

   ・②については、1人の寄附者が年間に寄附できる総額を制限する総枠制限(個人が年間寄附できる

    限度額は、政党・政治資金団体に対するもので2000万円まで、資金管理団体を含むその他の政治

    団体、公職の候補者に対するもので1000万円まで、会社、労働組合等の場合は、公職の候補者に

    対するものを除き750万円から1億円まで)と、1人の寄附者が同一の者に対して年間に寄附でき

    る額を制限する個別制限(個人の寄附は150万円まで、資金管理団体を含むその他の政治団体間

    の寄附は5000万円まで、政党・政治資金団体・資金管理団体を含むその他の政治団体間の寄附は

    無制限)がある。政治資金パーティーについても、1つの政治資金パーティーにつき同一の者から

    150万円を超えて支払を受けてはならないとされています。

 

   ・③については、㋐国又は地方公共団体から補助金等を受けている会社等、㋑赤字会社、㋒外国

    人、外国法人等、㋓他人名義又は匿名の者による寄附が禁止されています。

 

   ・④については、寄附者の意思に反する寄附のあっせん禁止、寄附への公務員の関与制限、政治資

    金団体に係る寄附は振込み以外の方法による寄附は原則として禁止されています。

 

 3,政治資金の寄附の制限と許容

  (1)規正法は、何人も国会議員などの「公職の候補者」自身に対し政治活動に関する寄附をすること

   を原則として禁止しているが(規正法21条の2第1項)、これには例外が2つある。一つは、その寄

   附が選挙運動に関する寄附の場合であり(規正法21条の2第1項のカッコ内)、この場合、その寄附

   者が誰であれ、公選法が選挙運動費用収支報告書にその寄附を収入として記載することが義務づけ

   られている(公選法189条)。

    もう一つの例外が、寄附を行ったのが政党である場合である(規正法第21条の2第2項)。自民党

   本部は「政策活動費」名目で幹事長ら「公職の候補者」に寄附を行っているところ、国会議員個人

   が政党本部から受け取った寄附は、国会議員ら「公職の候補者」のために政治資金の拠出を受ける

   治団体である「資金管理団体」(規正法19条第1項)の政治資金収支報告書に収入として記載さ

   れるべきであるが、政界では、記載する必要はないという解釈・運用がなされている。つまり、党

   本部から受け取った議員は「政策活動費」を自己の「資金管理団体」で一切収支報告しないため、

   実質的な税金である政治資金が使途不明金になっている。言い換えれば、ポケットマネーになって

   いなければ、政治や選挙の裏金になっているわけで、政治資金の透明化を要求している規正法の趣

   旨に反していることになる(https://openpolitics.or.jp/investigation/2017031701.html

   2017.03.17自民党本部の使途不明金 政治資金センターみんなで調べよう政治とカネ 自民党本

   部の「組織活動費」「政策活動費」名目の支出、高額な使途不明金)。

 

  (2)規正法違反としての「不記載」または「虚偽の記入」

    ①「不記載」とは入出金の記載自体をあえてしないことであり、「虚偽の記入」とは、会計帳簿

     の記載事項について真実に反した記入をすることをいう。単なる記載忘れや計算誤りなどのよ

     うに軽微な過失によるものは含まれないと解されている。なお、虚偽の記入については、形式

     的な資金移動が合致していても、実態と乖離した迂回寄附も虚偽記入となる。また、会計責任

     者以外の者が行った場合であっても、会計帳簿の記載責任者が会計責任者であることから、会

     計責任者に故意又は重大な過失があるときは、会計責任者も処分の対象となると解されてい

     る。

 

    ②罰則と公民権停止

     ア、違反者は5年以下の禁錮(拘禁刑)又は100万円以下の罰金に処せられ(規正法251

      項)、公民権を停止される(規正法281項、2項)が、政治団体の代表者が会計責任者の選

      任及び監督について相当の注意を怠った時には、この代表者も50万円以下の罰金に処せられ

      (規正法25条)、公民権を停止される(規正法281項)。罰金刑に処せられた者は、その

      裁判が確定した日から5年間選挙権及び被選挙権を停止されるが、裁判所は、情状によって、

      刑の言渡しと同時に、選挙権及び被選挙権を停止しない旨(罰金刑の場合に限る)又は停止

      する期間を短縮する旨を宣告することができることとされている(規正法283項)。した

      がって刑の言渡しと同時に何らの宣告もなされない場合には、当然前述のとおり一定期間選

      挙権及び被選挙権は停止されることになる。

       ※菅原元経産大臣は、20184月から201910月までの間に選挙区内の33団体と26人に

        対し合計71回で総額約80万円の香典、祝儀等を違法に寄附したとして略式起訴され、罰

        金40万円と議員辞職を考慮されて公民権停止3年に短縮された略式命令が出された。

 

     イ、現実的には、罰金刑でも公民権停止の問題があり、政治家の政治生命にかかわることか

      ら、違反の程度にもよるがほとんど起訴猶予とされている。

 

  (3)アメリカ合衆国の場合、2010年の最高裁判決で「政治広告費の制限は言論の自由に反する」と

   の判断が下され、1人の政治家に対する献金上限は維持されたが、大統領選・下院選と中間選挙の間

   の2年間につき、個人から複数の政治家に献金できる総額の上限は撤廃されたため、企業や個人、団

   体からの献金に上限がない「スーパーPAC(政治活動委員会)」が誕生した。スーパーPACへの献

   金は連邦政府のルールで報告・開示が義務付けられており、提出された書類は連邦選挙委員会のウ

   ェブサイトで誰でも閲覧でき透明性は確保されている。しかし、「アメリカン・アクション・ネッ

   トワーク(AAN)」と称する非営利団体があり、この非営利団体は資金の拠出者を開示する必要が

   なく、「ダークマネー」と呼ばれ政治との関係を表沙汰にしたくない企業や富裕層にとって、非営

   利団体を隠れみのにした献金がされている。1議席を争うのに50億円とも言われる政治献金が集め

   られ、1946年に設けたロビイスト規制法に基づくロビイストのロビー活動のための費用(ちなみ

   に、ロビー活動に費やされた2021年の費用は20年比6.8%増の37億7000万ドル(約5100億円)と

   過去最高を記録)とともに金権選挙の温床となっている。中国やロシアからは「合法の汚職」とい

   う批判もある(2022.4.20,同21 日本経済新聞 アメリカン・デモクラシー 漂うマネー・惑う

   票3,同4)。

 

 4、識者等による問題点の指摘

  (1)政治家には、①政治家につき一つだけ認められる資金管理団体、②政治家が代表となる政党支

   部、③「後援会」などと呼ばれるその他団体、という三種類の「サイフ」があり、(中略)政党支

   部といっても、党勢拡大というよりも政治家個人の政治活動費用として用いられるわけであるか

   ら、政党支部で集めた「カネ」を後援会などに移転してしまえば、寄附元と支出先の対応関係が見

   えにくくなり、「マネー・ロンダリング」の効果を持つことになる(谷口将紀「政治とカネ」21世

   紀のガバナンスのあり方:日本の課題とアメリカの経験より一部引用)。

 

  (2)政治家や政治団体に「金」を提供する形には、①政治資金の提供、②パーティ券の購入、③選挙

   資金の提供、④賄賂の提供などがあり、「金」の出所には正規の経理処理等により支出されるいわ

   ゆる「表のカネ」と、簿外処理により捻出したいわゆる「裏金」があるところ、これまで検察は裏

   金」による贈収賄などの「実質犯」に重きを置き、規正法は「形式犯」として軽視される傾向が長

   く続き、数多くのゼネコンが知事や市長に多額の賄賂を供与したとして摘発された平成5年のゼネコ

   ン汚職事件においても、贈収賄罪が摘発の中心で規正法違反はまったく問題とされなかった。しか

   し、平成6年の改正法が施行されてからはたとえ「表のカネ」であっても資金の透明性を害する行為

   に対しては厳正に対処していく強い姿勢が感じられる(宗像紀夫 政治資金規正法と企業の実務対

   策(下)―違反リスク回避ポイント NBL No.907 2009.6.15 90頁)。

    ※中島洋次郎元衆院議員(平成10年)、山本譲司元衆院議員(平成12年)、鈴木宗男衆院議員

     (平成14年)を詐欺や収賄罪との抱き合わせではあるが、規正法違反で起訴するに至ってい

     る。規正法違反の罪だけで国会議員を逮捕したのは、坂井隆憲元衆院議員(平成15年)のケー

     スが初めてだった。この後も、日本歯科医師連盟による旧橋本派への1億円ヤミ献金事件で村岡

     兼造元官房長官を在宅起訴しているし(平成16年)、西松建設側が禁止されている企業献金を

     小沢議員個人の資金管理団体に政治団体名義で寄附をしたとして、西松建設側の國澤幹雄と小

     沢議員側の大久保隆規が起訴された(平成21年)。地方政界がらみでも、土屋義彦元埼玉県知

     事長女による資金管理団体からの1億円余の私的流用事件(虚偽記載、平成15年)が摘発され

     ている。

 

  (3)「国政選挙の候補者、特に現職国会議員と地方議員や首長らとの間での現金のやり取りは、普通

   に行われている。・・・選挙区支部や政治資金団体を介して行われるこの金のやり取りは全くの適

   法である。地方議員の支部に対しての寄附は、相手の政治活動を支援するという意図をもった現金

   授受とみなされ、合法なのである。・・・令和元年の参議院議員選挙の公示前にも、各議員の収支

   報告書を見ればわかるとおり、候補者または候補者を支援している国会議員と地方議員らとの間

   で、金のやり取りが与野党問わず全国至る所で行われている。しかも。この年の四月には統一地方

   選挙があった。多くの現職国会議員並びにベテラン地方議員らは、関係のある地方議員に対して

   『陣中見舞い』として金を配る。・・・各議員への寄附は、会計処理の段階、つまり政治資金収支

   報告書提出期限の翌年の五月までに、政党支部からの寄附という形にすれば、・・合法な支出とす

   ることができるはずなのである(もちろん、私が渡した金の全額ではない。私は公示後にも金を渡

   しているし、間違いを犯したことを私は素直に認める)。」(河井克行 獄中手記 月刊Hanada 

   20223月号 41頁)

 

第3,選挙運動の資金と規制(選挙とカネ)

 1,選挙資金の収集

  (1)選挙運動に関して政党から公職の候補者個人が寄附を受けた場合(例えば、公認推薦料など)に

   ついては、公選法により提出が義務づけられている選挙運動費用収支報告書において、その使途を

   報告しなければなりません。

 

  (2)しかし、選挙資金か政治活動資金かの区別はできず公職の候補者(公職の候補者となろうとする

   者及び公職にある者を含む)が政党から受けた寄附については、政治活動のために自ら取り扱い、

   支出することもできますが、資金管理団体に取り扱わせるために寄附する場合は、寄附の量的制限

   に関する規定は適用されません。政党から受けた寄附を資金管理団体に寄附するかどうかは公職の

   候補者の判断によるところであり、資金管理団体に寄附しない場合には、政党から受けた寄附につ

   いて、その使途の報告の必要はありません(第五次改訂版 Q&A政治資金ハンドブック274頁 政

   治資金制度研究会編集 ぎょうせい 平成216月)。

 

  (3)この点、自民党は組織活動費(政治活動費)の名目で(当時)2,936百万円を支出しているが、

   そのうちの1,403百万円(48%)は二階俊博幹事長に、69百万円は同年8月まで党の国会対策委員

   長を務めた竹下亘氏に、それぞれ支払われている。しかし、二階氏の政治団体(新政経研究会)の

   収支報告書をみても、収入の部の寄附の合計は530万円で党本部から受け入れた1,403百万円がこ

   のなかに含まれていない。1992年に成立した「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等

   に関する法律」は、国会議員に対し、任期の開始の日および任期開始後毎年、保有する資産等を議

   院の議長に提出することを義務づけるとともに(同法2)、所得税法が規定する種類ごとに毎年度の

   総所得等を議院の議長に提出することを義務づけているが(同法3)、同年に両院議長において協議

   決定された「国会議員の資産等の公開に関する規程」5条によると、国会議員に求められる所得等報

   告書は納税申告書の写しの提出で代えることができるとされた。また、国会議員が政治資金の名目

   で収受する寄附等は、そこから諸々の政治活動に要した経費を差し引いた残額があった場合に、雑

   所得として課税されるが、そのような残額は通常なく、あったとしても把握するのは難しいとみな

   され、特段、税務調査をされることもなく、放置されているのが実態である。こうした納税申告の

   扱いに準じて提出される国会議員の所得等報告書には各種寄附金、党本部からの交付金は、たとえ

   それが巨額であっても、政治活動に使われたという大義名分だけで報告を要しないという扱いが、

   あたかも「聖域」かのように運用しているのが実情である(醍醐聰「政治とカネと会計責任」リク

   ルート事件で幕を開けた平成 企業会計2019 Vol71 No5 596頁、597頁)。

    ※不明朗な政治資金の支出があって、そのうちに私的な流用があった場合には雑所得として個人

     の課税対象となる。

 

  (4)自民党本部は、毎年、高額な政党交付金を受け取っているが、同本部は、毎年、都道府県支部連

   合会や各支部に対し交付金を出している。それゆえ、自民党の都道府県支部連合会や全国の支部の

   使途不明金の原資は、事実上政党交付金であると言っても過言ではない。つまり、自民党の都道府

   県支部連合会や各支部の使途不明金は、事実上税金が使途不明金になっているに等しいのである。

   このことは、規正法が遵守されず、違法な運用がなされた結果なのである。規正法は、国会議員な

   どの「公職の候補者」に対する政治活動のための寄附を原則として禁止しているが、その寄附者が

   政党の場合については例外として許容している(規正法21条の2)ので、自民党本部は前述のよう

   に「政策活動費」等の名目の寄附を幹事長らに行っている。同法は、国会議員らのために政治資金

   の拠出を受ける「資金管理団体」を認めているので(規正法19条第1項)、国会議員個人が受け取

   った寄附は、この「資金管理団体」の収支報告書で記載されるべきだが、政界では、記載する必要

   はないという解釈・運用がなされ、検察はそれを追認してきた。つまり、党本部から受け取った議

   員は「政策活動費」を自己の資金管理団体で一切収支報告してはいないため、政治資金(実質は税

   金)が使途不明金(ポケットマネーまたは政治や選挙の裏金)になっている(上脇博之「政治資金

   制度―議会制民主主義を実現するための規正を」83頁 憲法研究第5号 201911月)。

 

  (5)2021年10月の衆院選前に前職の選挙区立候補者が京都府連を通じて京都府議、京都市議ら計約

   40人の政治団体に各50万円を交付したことや(2022.4.5中国新聞)、2019年の参院選公示の約1

   か月半前、当時の奈良県議22人の関連政治団体に自民党の堀井巌参院議員(奈良選挙区)が代表を

   務める政党支部がそれぞれ30万円を寄附したことが公選法上の当選を目的とする買収にあたるので

   はないかと問題になった(2022.5.28中国新聞)。また、千葉県東金市長や群馬県議が地元の市議

   選の陣中見舞いとして市議らに現金を配っているが、その背景には議会対策や勢力争いがあるとの

   指摘が出ており、2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件とも構図が似通っている。千葉県東

   金市長の場合は、東金市の鹿間陸郎市長が陣中見舞いとして現金を配ったのは、市議会で予算案の

   採決を控えた2月末。最大会派の市議との関係がこじれる中、市長派議員を増やす思惑や来年の市長

   選をにらんだ意図を感じた市議がいた。また、群馬県議の場合は、狩野浩志群馬県議が前橋市長選

   で支援した候補者が敗れ、近い関係の市議を増やす狙いがあったとの見方が大半を占める(中国新

   聞2021.5.2 決別金権政治大規模買収事件の波紋 千葉・群馬ルポ)。

    ※中国新聞が広島県内の全地方議員を対象に実施したアンケートで、国会議員が政党支部などを

     通じて地方議員に提供する交付金や寄附金について、回答者の9割が「必要ない」と答えた

     (2021.1.1中国新聞)。

 

 2、公職の候補者等による公選法上の寄附の禁止

  (1)公職の候補者や後援団体による選挙区内の有権者への寄附は禁じられている(公選法199条の

   2)。有権者との関係が金銭や物品でつながれば、政治の公正さが失われかねないためである。結婚

   や入学の祝い金、病気見舞いの果物、町の運動会への飲食物の差し入れも禁止されており、有権者

   が求めてもいけない。選挙区内にある方の結婚披露宴や葬儀に政治家本人の代わりに政治家の秘書

   や配偶者が出席して政治家本人からの祝儀や香典を渡すことは罰則をもって禁止されているが、政

   治家本人が自ら出席して祝儀や香典をその場で出すことは罰則をもってまでは禁止されていない。

   なお、政党支部としての寄附は認められているが、この場合でも政治家の名前を表示してはいけな

   い。顔写真を付けるような「類推される方法」も法に抵触する。公選法を所管する総務省は、「配

   る際に政治家の名前を口頭で伝えただけでも、政治家による寄附行為に当たる恐れがある」と国会

   で答弁した。

 

  (2)過去において、小野寺五典元防衛相は、名前が入った線香を自ら配ったとして公選法違反容疑で

   書類送検され、2000年に議員辞職した。松島みどり元法相は、名前入りのうちわを配布したことが

   公選法違反と指摘され、2014年に閣僚を辞任し、刑事告発されたが不起訴処分となった。山尾(当

   時)(現在は菅野)志桜里衆院議員は、自身の後援団体である資金管理団体「桜友会」が有権者に

   香典などを渡したことが2016年に発覚し、刑事告発されたが不起訴処分となった。

 

  (3)公選法が禁じる寄附行為はあくまで「選挙区内」に限定されるので小選挙区選出の衆院議員であ

   れば、自身の選挙区ではない被災した自治体に寄附をすることはできる。総務省のホームページに

   は「政治家と有権者のつながりは大切だ。しかし、金銭や品物で関係が培われるようでは明るい選

   挙、お金のかからない選挙に近づくことはできない」と記されている。

 

 3、選挙費用の上限設定(法定選挙費用)と公費負担

  (1)立候補届が受理された時点から選挙期日の前日の午後12時(選挙カーなどでの連呼行為や街頭

   演説は午後8時)までの選挙運動期間中に選挙運動費用として支出することができる最高限度額のこ

   とを法定選挙費用と言い、選挙の種類によって異なるが、選挙人名簿に登録されている有権者数に

   人数割額を乗じて得た額と固定額の合算額などとなります。例えば、2021年の衆議院選挙(小選挙

   区)では、上限が平均約2480万円、2019年の参議院選挙(選挙区)では約4380万円、比例区は

   5200万円です。都道府県や全国を単位とする参議院の方が有権者も多いため、上限が高くなってい

   ます。

    ※衆議院小選挙区選挙の場合で固定額1,910万円(選挙区により2,130万円または2,350万円)

     に、人数割額として有権者1人あたり15円で計算した額を加算したものとなり、参議院比例代

     表選挙の場合では5,200万円の一律となり参議院選挙区選挙の場合で、固定額2,370万円(北

     海道は2,900万円)に人数割額として、有権者1人あたり13円(1人の選挙区)または20円(2

     人以上の選挙区)で計算した額を加算したものです。都道府県知事選挙の場合、固定額2,420

     万円(北海道は3,020万円)に人数割額として、有権者1人あたり7円で計算した額を加算した

     もの、指定都市の長の選挙の場合で、固定額1,450万円に人数割額として有権者1人あたり7円

     で計算した額を加算したもの、指定都市以外の市および特別区の長の選挙の場合で、固定額

     310万円に人数割額として有権者1人あたり81円で計算した額を加算したものとなる。なお、

     衆議院小選挙区選挙、衆議院・参議院比例代表選挙で候補者や候補者名簿を届け出た政党等に

     は、こうした選挙運動費用の制限は適用されない。

 

  (2)選挙運動費用の一部である選挙公報の発行、ポスター掲示場の設置、通常はがきの交付、新聞広

   告、政見放送、経歴放送などが公費で負担されている。

 

 4、公選法違反としての「買収」と「被買収」

  (1)買収には選挙(投票)買収と運動買収がある。

    ①選挙(投票)買収については、国会議員が夏と冬に選挙区内の地方議員へ資金を渡す「氷代・

    餅代」、統一地方選があれば「陣中見舞い」(上限は寄附者1人当たり150万円)や「当選祝い」

    のように政界では政治家同士が資金をやりとりする慣習がある。規正法に基づき、政党支部など

    の政治団体間の寄附や交付金として処理され、領収書を交わし政治資金収支報告書に記載し、都

    道府県選管などに提出後、国民に公開される。一方で、自分の選挙区内の政治家に資金を提供し

    た場合、買収の意図のある金が含まれていれば選挙買収の可能性が出てくる。ちなみに、「陣中

    見舞い」の収入は選挙管理委員会に報告されていれば所得税・贈与税は非課税となる。

 

    ②運動買収は、「手弁当」で自己の支持する候補者の当選をめざして運動すべきものであるとい

    う「選挙運動無報酬の原則」があるが、実際には、選挙運動に要する費用の一切を選挙運動者の

    負担に帰せしめるというのは選挙運動者に酷であり、実情に合わないので公選法197条の2等によ

    って、選挙運動者の労務に対し一定限度で費用の支出を認めている。

      ※公選法は、①選挙運動のために使用する労務者、②選挙運動のために使用する事務員、③

       車上等運動員、④手話通訳者等には、上限はあるものの報酬を支払うことができますが

      (公選法197条の2)、それ以外に報酬は支払えません。①については、1日につき1万円以

       内、ただし労務者に弁当を提供した場合には報酬から弁当の実費相当額を差し引きます。1

       日につき5,000円までであれば超過通勤手当を支払えます。期間・人数の制限はありませ

       ん。②については、1日につき1万円以内の報酬を支払うことができ、超過勤務手当を支払

       うことはできません。1日につき候補者1人につき、車上等運動員と手話通訳者等の合計で

       50人を超えない範囲内で雇うことができます。③については、1日につき1万5,000円以内

       で報酬を支払うことができ、超過勤務手当は支払えません。選挙カーの稼働時間は午前8時

       から午後8時までですので、超過勤務手当を支払えない以上、午前8時から午後8時までフ

       ルに選挙カーを動かすのであれば、労働基準法上の法定労働時間内で勤務する車上等運動

       員を複数人野党ことになります。④については、1日につき1万5,000円以内であれば、報

       酬を支払えます。超過勤務手当を支払うことはできません(公選法施行令129条1項ないし

       4項)(関口慶太、竹内彰志、金子春菜編著 こんなときどうする?選挙運動150問150答 

       Q47、48 ミネルヴァ書房 2020年11月)。

 

    ③買収罪が成立するためには、供与者、受供与者の双方に、その供与が当選獲得目的であるとい

    う趣旨の認識が必要であるが、供述のほか供与の時期、方法、態様等の客観的状況によって認定

    されることから、供与者が当選獲得目的の趣旨で供与しているのに、受供与者がそれを未必的に

    も認識がなかったということはあまりないであろう。なお、趣旨の認識以前の問題として、受領

    の意思の認定も必要となり、受供与者において費消ないし混同した場合は問題ないが、それ以外

    の場合には受供与者が目的物が何であるかをいつどうして認識したか、不受領ないし返却の意図

    を示す余地があったか、現実にこれを示したか否か、その後の目的物の保管状況や期間、その間

    における返却の可否難易等の諸点を総合判断すべきことになる。受供与者に受領の意思や趣旨の

    認識が認められなければ、供与者の申込罪のみが成立することになる。

 

  (2)罰則と公民権停止

    ①買収および被買収の選挙犯罪者は、3年以下の懲役若しくは禁錮(拘禁刑)又は50万円以下の

    罰金に処され(公選法2211項)、原則5年間公民権を停止されるが、裁判所は情状によって、

    刑の言渡しと同時に公民権を停止しない旨または停止する期間を短縮する旨を宣告することがで

    きる(公選法2524項)。

 

    ②現実的には、罰金刑でも公民権停止の問題があり、政治家の政治生命にかかわることから、違

    反の程度にもよるが起訴猶予とされることもある。

 

 5,識者、政治家による問題点の指摘

  (1規正法は、政治資金収支報告書の数字と領収書の帳尻が合っていればお金の意味については問わ

   れない。一方、公選法では資金提供の時期や意図によっては買収に問われる。規正法では合法でも

   公選法では罪になるようなケースがあり、「二重基準」になっているのが問題であり、2つの法律は

   一本化する必要があるし、買収に利用されかねない政党支部間の資金提供は禁止するなど法改正が

   必要だ。また、議員の処分については刑事罰に頼るのではなく、議会の自浄作用も重要になってく

   る。欧米では刑事罰より政治罰。議会の政治倫理審査会から非難決議をされると、政治家として立

   ち上がれない状況になるなど、審査会が機能している(元日本大法学部教授岩井奉信氏(政治

   学))。

 

  (2)「公職の候補者は公選法で選挙区での寄附が制限されているが、政治団体、政党支部は除外され

   ている。このため、地方議員が関係する政治団体、政党支部へのカネは選挙前でも配れる。それを

   一定期間は、政治団体、政党支部に対してであっても公職の候補者からの寄附は禁止する。条文を

   数行改正すれば簡単に禁止できる。」(2022421日 中国新聞 決別金権選挙 識者3人イン

   タビュー 郷原信郎氏の発言)

 

  (3)選挙の時期によって政治活動と選挙運動との線引きはあいまいとされ、専門家には「政治活動と

   称する実質的な選挙運動が展開されるケースが多い」との批判があるが、選挙の現場においては次

   のやりとりが参考となる。

   「―選挙期間中の前後3か月を外した現金授受はセーフだという、3か月ルールもあるんですね。

   『まあ、昔からそう言われているんですね。県警の取締本部が設けられているのがだいたいその期

   間ですよ。うどん一杯でもおごってもらわんように気をつけろ、と黄色信号がともる。それもおか

   しいと思うんよ。選挙の運動そのものは公示から投票日の間でないといけないけど、それ以外なら

   政党活動なら許されますよというようなことが決められている。じゃあ、何でお金のやりとりは3

   月前までに限られるのか。200日前、1年前なら問題ない。だったら、全部規制せいやと思う。

   (常井健一 「おもちゃ 河井案里との対話」337338頁 檜山俊宏氏とのインタビュー 文藝

   春秋 20222月)

 

第4、小括

    政党の政治資金は個人献金と党費でまかなわれるべきなのが理想の姿であるが、現実はほど遠

   い。政治に「カネ」がかかるのは、選挙で当選するための地盤固めや票集めに日常からの秘書等に

   よる活動が必要であり、そのための人件費が相当のウエートを占めているからである。「政策活動

   費」ないし「組織活動費」の名目で政党の有力政治家を経由して党の政治家に事実上報告義務なく

   配布される仕組みが存続している以上、いくら政治家個人への献金を禁止しても、政治とカネにま

   つわる腐敗ないし不祥事はなくならず、これを防止するためには、政治に必要となるカネの流れを

   できるだけ透明化していくしかない。政治と「カネ」の問題は、選挙制度はもとより国民の政治意

   識とも密接に関係してくることから、政治と「カネ」に関する不祥事の問題が一旦大きくなると、

   時の内閣支持率に大きく影響し、政権の不安定要素や政局ともなってくるものである。

 

 

 

    (付記)中国新聞は、「ばらまき」(282頁ないし285頁)(中国新聞「決別金権政治」取材班 

       集英社 2021.12)や中国新聞2021.5.27の紙面において、約2800万円余りの買収資金の

       出所は、自民党から河井夫妻に渡った1億5000円とは別に、当時の安倍政権中枢から提供

       された別の裏金が原資だった疑いがあるとしているが、政治ジャーナリストの田崎史郎氏

       は官房機密費についてはその可能性は低いとしている(2022.4.21中国新聞「決別金権政

       治」識者3人インタビュー)。

 

 

 

  (参考文献)

   ・実務と研修のための わかりやすい公職選挙法 [第十六次改訂版] 選挙制度研究会編 ぎょうせい 

    令和3年7月

   ・逐条解説 政治資金規正法 [第二次改訂版] 政治資金制度研究会編集 ぎょうせい 平成14年8月

   ・平成31年1月改訂版 くらしの中の選挙 公益財団法人明るい選挙推進協会

   ・政治資金規正法のあらまし 総務省自治行政局選挙部政治資金課

   ・Q&A政治資金ハンドブック(第五次改訂版)政治資金制度研究会編集 ぎょうせい 平成21年6

    月

   ・政治資金規正法要覧<第五次改訂版>政治資金制度研究会 監修 平成27年9月

ページ先頭へもどる