弁護士の経済的基盤の問題もあるが、もう一度、顧客である依頼者の立場に立って考えてみる必要がある。依頼者からみると、確かに弁護士の数が増え、広告も盛んにされているが、かえってどの弁護士を選んだらいいかで迷っているように思われる。そのため、弁護士から登録料を取って依頼者に紹介する事業が隆盛となっている。弁護士会の法律相談センターによる弁護士紹介も、以前のような機能をはたしていない。適材適所の観点から言えば、なんらかのスクリーニングを経たうえで、依頼者が弁護士に依頼するという方がいいであろう。現状では、そのようなスクリーニング機能をはたすものはなく、弁護士の自己申告のみである。依頼者は、一定の経験を求めてくるが、経験だけではまかなえない時代になっている。社会事情が複雑かつ多様になると、法律も次々に改正されることになるし、新しい知識は当然として、より細かい専門的、技術的知識が必要になってくる。弁護士の数だけ増やせば、市場経済の競争原理と同様に、過当競争になるだけである。弁護士という職業が、市場原理になじむか疑問もあるが、野放しの過当競争ではなく、一定のルールは作っておくべきであろう。一つの案として、認定医制度のようなものを作ってはどうであろうか。一定の専門分野について、依頼者の選択の目安となるよう資格制度である。それができるのは日弁連だけである。司法試験合格者を、1000人にすべきか1500人にすべきかの議論も必要であろうが、もっと依頼者の視点に立って、「認定弁護士」制度のようなものと合わせた形での議論が望まれる。、