高校までの教師は生徒に答えだけを教えている。学ぶ方法は教えてくれない。学ぶ方法、すなわち、どのように考えるのか、もっと遡れば、何を考えるのか、課題の設定の仕方、正しい質問の仕方は教えてくれない。大学予備校、大学、大学院でやっとそのような教え方がでてくるような気がする。「今の時代、答えはたんなるコモディティにすぎないというのに。将来は、正しい質問をすることを教育の中心に据えるべきだろう。」「社会に出て、同僚と話し合いながら問題に取り組めば協働(コラボレーション)となる。何かがおかしくないだろうか。なぜ、適切な質問を探すことに重点が置かれないのだろうか。質問さえ正しければ、答えを出す方法はいくらでもある。」(ムーンショット! ジョン・スカリー著 川添節子訳 パラボラ 2016年2月 211頁)。まさに同感である。人工知能は自動的に答えを出してくれるが、その答えのための質問を設定し、その答えからなんらかの判断をして決断を下すのは人間である。ちなみに、「ムーンショットとは、シリコンバレーの用語で、『それに続くすべてをリセットしてしまう、ごく少数の大きなイノベーション』のこと」で、「最近の消費者は、アマゾンを始めとしたさまざまなサイトから、商品やサービスの価格や評価の情報をリアルタイムで入手できる。また、フェイスブックなどのソーシャル・メディアを通じて常に友達とつながっている。その気になれば、世界中のどこでも、すぐに人を集めることができる。史上最高のムーンショットともいうべき、こうした動きが生産者から消費者へのパワーシフトを加速させている。顧客へのパワーシフトは、起業家にとって未曾有のチャンスとなるだろう。同時に、伝統的な産業にとっては崩壊の始まりとなるかもしれない。」(前同書6頁、57頁)ということは、どの業界においても重く受け止めなければならない。なににつけ、正しい質問、自分の中では正しい問題の立て方がうまくできないために、考えがすすまなくなることがよくあるので、問いを問い直す力も必要になってくる。「数学でかつて、定規とコンパスだけを使って、角を三等分しなさいという問題が出されたことがあります。この問題は長きにわたって誰も解けなかった。するとある人が、そもそもこれはできないことだと証明したのです。解けない問題にみんなが挑戦していたわけです。そういうことが自分の中でも起こる可能性はあります。」(【インタビュー】はたして、論理は発想の敵なのか 野矢茂樹 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2016年4月号 93頁)ということである。