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中村法律事務所

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弁護士と依頼者の関係

1、致知出版社から毎月発売されている「致知」という雑誌がある。人間学をメインテーマにした堅い雑誌であるが、2016年上半期の実売部数は11万3000部を超えており、週刊大衆や週刊ダイヤモンドよりも多く、週刊女性にも勝るとも劣らない実売部数である。その「致知」の2016年10月号から、童門冬二氏による「小説 徳川家康」の連載が始まっている。徳川家康は、描く人によっていろいろな人物像があるが、竹千代と呼ばれた少年期に今川義元の下で人質として生活しており、その折に今川義元の師僧であった太原雪斎の薫陶をうけたことは有名である。太原雪斎は、竹千代は将来今川義元より大物になると見込み、古代中国の唐の二代目皇帝太宗が侍臣といろいろな課題について対話した問答集である「貞観政要」を特に選んで講義したという。その中でも「君(治者)と人民との関係」について述べられたところを何度も繰り返し講義したそうである。

 

2、それは次のような文章だ。「古語に云う、君は舟なり、人は水なり。水は能く舟を載せ、亦能く舟を覆す」というである。この件を、雪舟は家康に対して、「君すなわち治者を舟に例え、治められる人民を水に例えている。したがって、治者が良い政治を行っていれば、人民は何も言わずに波も立てない。逆にその治者すなわち舟を支えてくれる。しかし治者が一旦悪政を行えば、水すなわち人民は怒って波を立て、場合によっては治者である舟をひっくり返してしまう。これを聞いた唐の太宗はいたく感動し、なるほど、水は実に恐ろしい存在だという感想を漏らした。人民は単に愛すればよいというわけではなく、常に恐るべき存在だという緊張感を持つということだ」と説き、家康も「民は愛すべき存在だという考え方と同時に、恐るべき存在だという認識を持った唐の太宗は、やはり的確に人民の性格を見抜いている」と感じたという。

 

3、この「貞観政要」の件は、「君と人民の関係」、すなわち「治者と被治者」のことを述べたものだが、戦国大名の時代においては「主人と家臣」の関係に置き換えられるが、現代においては、「事業者と消費者」の関係や、「専門家と依頼者」の関係に置き換えることができるであろう。もっと言えば、「男と女」や「夫婦」の関係についてもあてはまるかもしれない。弁護士としても、「専門家と依頼者」すなわち「弁護士と依頼者」の関係について、この「貞観政要」の件の言わんとするところを日々噛みしめながら対応していかなければならないものである。

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