労働人口の4割が非正規雇用といわれている。長期雇用の保障がなく、年収も200万円にも満たない場合もある。正規雇用である正社員との格差は歴然としている。同じことを同じだけやっているにもかかわらず、これだけの差がでるとすれば、それはなぜであろうか。正社員が、長時間労働、転勤移動、部署替えなどをなんらの異議なく受け入れているからであろうか。高度成長期であればこのようなことも言えたであろうが、世界的な低成長の現在にあっては、これだけの差を説明することは難しくなっている。そこで、同一労働同一賃金という考え方に基づいて是正しようとしているのであろう。しかし、職務給についてはこの原則があてはまるとしても、職能給についてどの程度妥当するかは問題である。職務給についても成果に差は出てくるが、職能給については、仕事の成果にかなりの差が出てくるからである。人事考課が必要となる所以である。したがって、厳密に言えば、同一価値労働同一賃金というべきであろうが、この「価値」の評価が難しく、人事考課をめぐっていつも問題となるものである。この「価値」の評価が客観的に適正に実施できるのであれば、同一労働同一賃金は意味を持ってくる。
現在の正社員の賃金を基準に同一労働同一賃金という考え方に基づいて是正しようとすると、非正規雇用者の賃金を大幅に上げざるを得ないことになるが、そうすると全体の賃金コストが上がってしまい、企業の利益を圧迫することになる。全体の賃金コストを上げないで非正規雇用者の賃金を是正しようとすると、正社員の賃金をどのように組み替えるかということになる。働き方も多様になってきていることから、正社員の中でも多様性を持たせていき、いわゆる「限定正社員」を作って多様性を持たせることになる。新卒一括採用、年功序列、終身雇用という雇用慣行も見直す必要があることから、この機会になんらかの抜本的な対策を講じておく必要がある。
最終的には、転職市場を活性化したうえで、解雇法制を緩和し、労働者と使用者が労働契約を明確化して、適度な緊張感を持って協働していかなければならないであろう。そのためには、労働者も使用者も日々スキルを磨いていかなければならない。